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大阪地方裁判所 昭和53年(ワ)2329号 判決 1980年8月04日

原告 名エン株式会社

右代表者代表取締役 青木信樹

原告 ユージー基材株式会社

右代表者代表取締役 柴田肇昭

原告 化成品商事株式会社

右代表者代表取締役 松下敦

右原告ら訴訟代理人弁護士 渡辺四郎

同 藤平芳雄

同 澤井種雄

同 長山宗義

被告 有限会社益生鋳造所

右代表者取締役 丹村四郎

被告 丹村四郎

右被告ら訴訟代理人弁護士 田畑宏

同 和藤政平

同 森川翼徳

主文

一  被告らは、各自、原告名エン株式会社に対し、金一八三五万九七〇二円、同ユージー基材株式会社に対し、金一五四〇万七九九〇円、同化成品商事株式会社に対し、金四九二万円、及び右各金員に対する昭和五一年四月一日から右各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は被告らの負担とする。

四  この判決の主文第一項は、被告らに対し、原告名エン株式会社については金六〇〇万円の、同ユージー基材株式会社については金五〇〇万円の、同化成品商事株式会社については金一六〇万円の、各担保を供するときは、仮りに執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、各自、原告名エン株式会社に対し、金一九七八万〇〇二四円、同ユージー基材株式会社に対し、金一六二四万八九〇九円、同化成品商事株式会社に対し、金五七一万二〇〇〇円、及び右各金員に対する昭和五一年四月一日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、いずれも、グラスファイバー、グラスマット、樹脂等を販売する商社である。

2  訴外コトブキ工業株式会社(以下、「コトブキ工業」という。)は、昭和四七年一〇月、滋賀県野洲町において設立された株式会社で、グラスマット、樹脂等を原料として浄化槽を製造していたが、設立以来その営業成績は悪く、特に、昭和五〇年二月に工場を同県八日市市に移転してからは、経常的な赤字経営が続き、資金繰りも行き詰って、訴外有限会社栄工業(以下、「栄工業」という。)及び訴外平野鋳造所こと平野正から金融を受けていた。

栄工業及び平野正と資金面で密接な関係のあった被告会社取締役の被告丹村四郎(以下、「被告丹村」という。)は、昭和五〇年八月頃、コトブキ工業がこのような経営状態にあることを知って、同社が原材料として使用しているグラスマット及び樹脂を同社に仕入れさせたうえ、安く買いたたいて利益をあげようと考え、同社の代表取締役松尾寿孝に対し、グラスマット及び樹脂を現金で買い取るから、これを仕入れるように勧めた。その結果、コトブキ工業は、被告会社に転売して現金化する目的で、自社の消費量の二倍にあたるグラスマット及び樹脂を、代金支払いの見込みも立たないまま、原告名エン株式会社(以下、「原告名エン」という。)及び訴外山城化成こと田中磐から、左記のとおり買い受けたが、その代金の支払をすることなく倒産した。

(一) 原告名エンより、昭和五〇年一〇月四日から同五一年三月一五日までの間に、別紙商品目録1記載のとおり、グラスマット合計六万四五〇〇キログラムを代金合計金二九四四万七五〇〇円で買入。

(二) 田中磐より、昭和五〇年一〇月二日ころから同五一年三月五日ころまでの間に、別紙商品目録2記載のとおりグラスマット合計五万三〇〇〇キログラムを代金合計金二五三五万五〇〇〇円で買入。

(三) 田中磐より昭和五〇年一〇月六日ころから同五一年三月一七日ころまでの間に、別紙商品目録3記載のとおり、樹脂(商品名ポリライト)合計一〇万七二〇〇キログラムを代金合計金二五七二万八〇〇〇円で買入。

3  コトブキ工業は、このようにして買い入れたグラスマット及び樹脂のうちから、グラスマット合計七万七二五〇キログラム及び樹脂合計二万三八〇〇キログラムを、昭和五〇年一〇月一〇日から同五一年三月一六日までの間に、別紙商品目録4記載のとおり、グラスマットについては代金合計二三三八万円、樹脂については代金合計二八五万六〇〇〇円で、被告会社に転売した。なお、右転売の際の商品価額はグラスマットについてはコトブキ工業の平均仕入キログラム単価四六六円四〇銭のものが平均単価三〇二円六五銭、樹脂については同仕入キログラム単価二四〇円のものがその半額の一二〇円であった。なお、被告会社がコトブキ工業より買い受けたグラスマットの総量七万七二五〇キログラムのうち、原告名エンがコトブキ工業に売り渡したものはその五四・九パーセント(コトブキ工業が原告名エン及び田中磐から買い受けた前記グラスマットの総量に対する同社が原告名エンから買い受けたグラスマットの量の占める割合)に相当する四万二四一〇キログラムであり、残りの三万四八三九キログラムが田中磐のコトブキ工業に売り渡したグラスマットから被告会社に転売されたものであると推定される。

原告名エン及び田中磐は、コトブキ工業及び被告会社の右取込詐欺行為により、被告会社の転買した商品の価額相当額の損害を被った。

4  仮りに、被告会社がコトブキ工業に対し、前記のとおり、換金のためにするグラスマット及び樹脂の仕入を勧めたものではないとしても、被告会社としては、取引上相当の注意を払えば、コトブキ工業が右商品代金の支払をする見込みがないことを知りえたにもかかわらず、その注意を怠って、同社から前記グラスマット及び樹脂を買い受けることにより、原告名エン及び田中磐の右商品に対する追及を不可能にし、その結果、原告名エン及び田中磐は、右被告会社が転買した商品の価額相当額の損害を被った。

5  原告名エン及び田中磐が被った損害額は次のとおりである。

(一) 原告名エン 一九七八万〇〇二四円

グラスマット四万二四一〇キログラムに一キログラム当り四六六円四〇銭(コトブキ工業の平均仕入価額)を乗じた一九七八万〇〇二四円。

(二) 田中磐   二一九六万〇九〇九円

グラスマット三万四八三九キログラムに右四六六円四〇銭を乗じた一六二四万八九〇九円及び樹脂二万三八〇〇キログラムに一キログラム当り二四〇円(コトブキ工業の仕入価額)を乗じた五七一万二〇〇〇円の合計。

被告会社は、民法七〇九条により、原告名エン及び田中磐に対して、右各損害額の賠償をしなければならない。

6  被告丹村は、被告会社の取締役としての職務を行うにあたり前記不法行為をしたものであり、その職務を行うにつき悪意又は重大な過失があるから、有限会社法三〇条ノ三により原告名エン及び田中磐の被った前記各損害額につき、被告会社と連帯して賠償の責を負うべきである。

7  田中磐は、前記商品目録2記載のグラスマットを原告ユージー基材株式会社(以下、「原告ユージー基材)という。)から、商品目録3記載の樹脂を原告化成品商事株式会社(以下、「原告化成品商事」という。)からそれぞれ買い受けたものであるところ、昭和五三年四月一三日、被告会社及び被告丹村に対して有する前記損害賠償請求債権及びこれに対する遅延損害金請求債権のうち、グラスマットに関する債権を原告ユージー基材へ、樹脂に関する債権を原告化成品商事にそれぞれ譲渡し、右各譲渡通知書を本件訴状に添付して被告らにそれぞれ送達した。

8  よって原告らは、被告会社に対しては民法七〇九条に基づき、被告丹村に対しては有限会社法三〇条ノ三に基づき、請求の趣旨記載の各損害賠償金及びこれに対する不法行為の後日である昭和五一年四月一日から各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は不知。

2(一)  同2ないし4の事実のうち、コトブキ工業がグラスマット、樹脂等を原料として浄化槽を製造していた会社であること、被告会社が昭和五〇年九月三〇日から同五一年三月一六日までの間に、代金合計金二七七七万一〇〇〇円相当分のグラスマット及び樹脂を買い受けたことは認めるが、コトブキ工業が原告名エン及び田中磐から原告ら主張のグラスマット及び樹脂を買い入れたことは不知。その余は否認する。

(二) 被告会社は、昭和五〇年一月頃、取引先である川崎産業からコトブキ工業を紹介され、コトブキ工業代表取締役松尾寿孝から同社保有のグラスマット等の買受を強く要請されたため、被告会社もこれを承諾して、前記のとおり、昭和五一年春頃までグラスマット等を買い受けるようになったものである。被告会社は、コトブキ工業の申し出たとおりの値段で買い受けたものであり、その一キログラム当りの単価は、昭和五〇年九月から同五一年一月までは、グラスマットが二八〇円、樹脂が一二〇円、同年二月以降は、グラスマット三五〇円、樹脂一五〇円となっていたが、代金支払が現金であることを考慮すると、右価額は決して不当に安くはなく、被告会社が通常の取引を超えた不当の利益を得た事実はない。

(三) コトブキ工業は、昭和五〇年九月ころから浄化槽の中堅メーカーである訴外株式会社大管工業(以下、「大管工業」という。)の注文を受けるようになり、同年一〇月、一一月ころにはその受注高は月額二〇〇〇万円程度に達し、六〇〇〇坪ないし七〇〇〇坪の敷地に五〇〇坪の工場、倉庫を所有し、従業員も四六名前後に増員され、売掛代金二〇〇〇万円及び在庫品約三〇〇〇万円を有し、その業績は順調であった。したがって、松尾寿孝が原告名エン及び田中磐からグラスマット及び樹脂を始めから代金を支払わない意思で買い受けたとは考えられない。

(四) 被告会社は、コトブキ工業から本件グラスマット等の商品を買い受けただけであり、その経営内容についての詳細を知るよしもなかった。ただ、その経営規模及び松尾寿孝より聞かされた大管工業との取引状況から、松尾寿孝が右グラスマット等を代金支払の意思なく買い受けたものであるとは考えもしなかったし、コトブキ工業が倒産するとも思わなかった。また、そのような事実を窺わせる事情はまったく存在しなかったのである。

被告会社が、コトブキ工業の原告名エン及び田中磐に対する代金未払の事実を知り、又は知るべきであったとしても、それだけでは被告会社の行為には何ら違法性がない。即ち、物品売買においては、買主は、売主がその仕入先に仕入代金を支払っているか、確実に支払えるかなどということは現在の取引慣行上考慮する必要はなく、売主が仕入先に仕入代金を支払えず、その結果その仕入先と買主との間に利害関係を生じたとしても、それは自由競争の範囲内にあるものというべきである。

3  同5の事実は否認する。

グラスマット及び樹脂の当時の価額は、実際の取引では一定せず、グラスマットについてはキログラム当り単価四〇〇円で更に五〇円の値引きをすることもあり、樹脂についてはキログラム当り単価二〇〇円ないし二二〇円であった。

4  同6の事実は否認する。

5  同7の事実のうち、原告ら主張の各債権譲渡通知書が、本件訴状に添付されていることは認めるが、その余は不知。

第三証拠《省略》

理由

一  コトブキ工業がグラスマット、樹脂等を原材料として浄化槽を製造していた会社であることは当事者間に争いがなく、被告会社がコトブキ工業から継続的にグラスマット及び樹脂を買い受けたことがあることは、その期間及び数量の点を除いて当事者間に争いがない。

二  《証拠省略》に前記当事者間に争いのない事実を総合すると次のとおりの事実が認められる。

1  コトブキ工業は、昭和四七年一〇月、滋賀県野洲町において設立された資本金六〇〇万円の株式会社で、グラスマット及び樹脂を原材料とする浄化槽の製造業を営み、その代表取締役は松尾寿孝であった。昭和四九年一一月に、同社はその工場を同県八日市市に移転したが、その後昭和五〇年八月ごろまではほとんど受注がなかったため、その間負債が増加し、同年八月三一日現在においては、負債総額約七〇〇〇万円、二七〇〇万円以上の債務超過となり、すでにこの時点で倒産寸前の財政状態であった。同年九月からは、浄化槽メーカーの中堅業者である大管工業から受注できることになり、同年九月には約七〇〇万円、一〇月には約一四七〇万円、一一月には約二三九〇万円、一二月には約二一七〇万円、同五一年一月には約一五〇〇万円、二月には約二五〇〇万円、三月には約一五八〇万円、四月には約一四三〇万円の各売上高を計上したが、売上原価が売上高を超える月がほとんどであり、売上利益においてすでに赤字となり、従業員の増加に伴って増大した人件費等の経費の支払のための資金繰りは専ら借入金等によってまかなう状態で、ますます損失を増大し、遂に、昭和五一年五月、一億円以上の負債をかかえたまま倒産するに至った。

2  しかしながら、松尾寿孝は、大管工業との取引を続けることによって会社の再建は可能であると判断し、そのためには当面の資金繰りをつけて会社の延命をはかることが必要であるところから、コトブキ工業の取締役であり以前から資金の援助を受けていた川崎栄及び同人の姻戚で浄化槽の原材料等の販売業を営んでいた訴外川崎産業株式会社(以下、「川崎産業」という。)の代表取締役をしている中村修に対し、昭和五〇年八月ころ、融資先について相談をもちかけたところ、同人らから、この際、約束手形で仕入れている原材料のグラスマット及び樹脂を自社の使用量を超えて余分に仕入れたうえ、これを現金で売って経費の支払にあてるよりほかに方法がないといわれて、その方法をとることもやむをえないと決意した。

被告会社は、被告丹村が昭和三九年ころから個人で営んでいた鋳物製品の製造販売業を、昭和五〇年九月に会社組織とするために設立し、自らがその取締役となって代表している有限会社である。被告丹村は、川崎産業に対し、マンホールのふた等の浄化槽設備を売却し、また、手形割引等の方法による融資をしていた関係で、以前から中村修を知っていた。昭和五〇年九月ころ、川崎栄及び中村修から右コトブキ工業の仕入れた原材料の買取り方を求められた被告丹村は、コトブキ工業の経営状態及び同社が原材料を売却する途をとるに至った事情を同人らから説明を受けて、よく知りながら、その買取り方を承諾した。

3  コトブキ工業は、右被告会社との合意に基づき、自社で使用する消費量の約二倍にあたるグラスマット及び樹脂を、原告名エン及び田中磐から、請求原因2の(一)ないし(三)記載のとおり買い受け、その代金支払のために満期までの期間が一〇〇日から一七〇日くらいの約束手形を振り出した。コトブキ工業は、このようにして買い入れたグラスマット及び樹脂のうちから、昭和五〇年一〇月四日から同五一年三月一六日までの間に、グラスマット合計七万三二五〇キログラム及び樹脂合計二万〇五〇〇キログラムを、別紙商品目録5記載のとおり、被告会社に転売して、その都度、被告会社小切手又は銀行送金の方法で代金の支払を受け、これを給料等の経費の支払に充てた。その売買単価は、グラスマットについては、昭和五一年一月までは一キログラム当り二八〇円、同年二月以降は三五〇円であり、同時期のコトブキ工業の仕入価額が同年一月頃までは三八〇円ないし四五五円、同年二月頃以降は五一五円ないし五三〇円であることに比べると極めて安価であり、樹脂については、一キログラム当り一二〇円で、コトブキ工業の仕入価額二四〇円の半額であった。

なお、被告会社がコトブキ工業より買い受けたグラスマットの総量七万三二五〇キログラムのうち、原告名エンがコトブキ工業に売り渡した分は、その五四・九パーセント(コトブキ工業が原告名エン及び田中磐から買い受けたグラスマットの総量に対する同社が原告名エンから買い受けたグラスマットの量の占める割合)に相当する四万〇二一四キログラム(キログラム未満四捨五入)であり、残りの四五・一パーセントに相当する三万三〇三六キログラム(キログラム未満四捨五入)が田中磐のコトブキ工業に売り渡した分であると推認される。

4  被告会社は、コトブキ工業から転買したグラスマット及び樹脂のほとんどを、買い受けた日又はその直後に、川崎産業又は平野正に売却している。その売買単価は、グラスマットについては、一キログラム当り三八〇円ないし四五〇円であり、樹脂については、一キログラム当り一八〇円ないし二五〇円であって、代金は満期までの期間が二〇〇日くらいの約束手形によってその支払を受けている。平野正も被告丹村が融資をしている取引先であり、被告会社は、右川崎産業及び平野正以外には商品の転売をしていない。

《証拠判断省略》

右1ないし4の事実を総合すると、昭和五〇年九月当時、コトブキ工業は、負債総額約七〇〇〇万円、二七〇〇万円以上の債務超過状態にあり、借入金によって辛うじて資金のショートを免れている状況で、大管工業との取引による受注の増加が見込まれていたとはいえ、経費の支払に充てるために原材料を仕入価額以下で濫売するようなことを継続すれば、ますますその財務状況は悪化の一途をたどり、遠からず倒産に至ること、したがって、原告名エン及び田中磐から買い受けた右原材料の代金の支払が不可能になることが明らかであったにもかかわらず、松尾寿孝は、この点に思いを至すことなく、ただ、当面の資金ショートを延ばすだけの目的で自社の消費量を超える原材料の仕入れをすることに踏みきったことが明らかであって、少なくとも別紙商品目録5記載の商品についてのコトブキ工業の買受は通常の経済取引として許容される範囲を逸脱した違法なものといわなければならず、また、被告丹村も、これらの事情を知りながら、あらかじめ、被告会社が右商品の買取りをすることを引き受けて、松尾寿孝が右取引行為に出ることにつき積極的に加功したものというべきであって、被告会社の右行為もまた、コトブキ工業の行為とともに一体として共同不法行為の関係にたつか、少なくともこれを幇助したものと解するのが相当であり、原告名エン及び田中磐は、右コトブキ工業及び被告会社の共同不法行為により、別紙商品目録5記載の商品のうち各自がコトブキ工業に売り渡した分の時価相当額の損害を被るに至ったことが明らかである。

したがって、被告会社は、民法七〇九条、七一九条により、コトブキ工業と連帯して、原告名エン及び田中磐が被った右損害を賠償しなければならない。

三  原告名エン及び原告ユージー基材は、別紙商品目録4記載の番号(1)のグラスマット四〇〇〇キログラムは、別紙商品目録1、2記載のグラスマットの一部であると主張し、また、原告化成品商事は、右商品目録4記載の番号(4)の樹脂三三〇〇キログラムは、別紙商品目録3記載の樹脂の一部であると主張するが、右各事実を認めるに足りる証拠はない。

四  そこで、原告名エン及び田中磐が被った損害額について算定する。

1  損害額算定の基準となるグラスマットの時価は、原告名エン及び田中磐がコトブキ工業へ売却した別紙商品目録記載1及び2の売渡価額の各平均価額をもって相当と解するところ、原告名エンがコトブキ工業に売却したグラスマットの売渡平均価額は一キログラム当り四五六円五五銭(銭位未満四捨五入)、田中磐のそれは四七八円四〇銭(銭位未満四捨五入)であることが計数上明らかであるので、原告名エン売渡分については右価額を、田中磐売渡分については原告ユージー基材の主張する四六六円四〇銭を前記二の3で認定した別紙商品目録5記載のグラスマットのうち原告名エンがコトブキ工業に売り渡したものと認められる分四万〇二一四キログラム及び同田中磐の売渡分と認められる三万三〇三六キログラムにそれぞれ乗ずると、原告名エンがグラスマットにつき被った損害は一八三五万九七〇二円(円位未満四捨五入)、田中磐がグラスマットにつき被った損害は一五四〇万七九九〇円(円位未満四捨五入)となる。

2  損害額算定の基準となる樹脂の時価は、田中磐がコトブキ工業へ売却した別紙商品目録記載3の売渡価額をもって相当と解するところ、右売渡価額は一キログラム当り二四〇円であるから、これを別紙商品目録5記載の田中磐がコトブキ工業に売り渡したと認められる樹脂の合計二万〇五〇〇キログラムに乗ずると、田中磐が樹脂につき被った損害は四九二万円となる。

右損害額算定の基準となる時価について、被告らは、グラスマットは一キログラム当り四〇〇円で五〇円の値引をすることもあり、樹脂は一キログラム当り二〇〇円ないし二二〇円である旨主張し、《証拠省略》の各一部には、右主張に符合する部分が存在する。しかし、他方、《証拠省略》によれば、右《証拠省略》に記載されている価額は、大量取引を前提とした価額であって、本件取引のような規模のものには必ずしも適切ではないことが認められ、《証拠判断省略》、他に、右損害額の認定を左右するに足りる証拠はない。

五  前記二の1ないし4の認定事実によると、被告丹村は、被告会社取締役として右認定の不法行為に及んだものであるが、右行為は被告会社の取締役としての任務を懈怠したものであり、かつ、右任務懈怠については重大な過失があったと認めるのが相当である。したがって、被告丹村は、有限会社法三〇条ノ三により、被告会社と連帯して、原告名エン及び田中磐の被った前記各損害を賠償しなければならない。

六  《証拠省略》によれば、田中磐が、昭和五三年四月一三日、被告会社及び被告丹村に対して有する前記認定の損害賠償債権及び遅延損害金請求債権のうち、グラスマットに関する債権を原告ユージー基材へ、樹脂に関する債権を原告化成品商事にそれぞれ譲渡したことが認められ、右認定に反する証拠はない。また、田中磐作成の右債権譲渡通知書が本件訴状に添付されていることは、当事者間に争いがなく、昭和五三年五月四日、右譲渡通知書が本件訴状とともに被告らに送達されたことは本件記録上明らかである。

七  以上の事実によれば、被告会社は、民法七〇九条、七一九条により、被告丹村は、有限会社法三〇条ノ三により、連帯して、原告名エンに対し一八三五万九七〇二円、原告ユージー基材に対し一五四〇万七九九〇円、原告化成品商事に対し四九二万円及び右各金員に対する不法行為の後日である昭和五一年四月一日から各完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払をしなければならないことが明らかである。原告らの本件請求は右の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条一項を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 東條敬 裁判官 渕上勤 宮本由美子)

<以下省略>

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